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農山村再生

2月26日の勉強会では小田切徳美氏著『農山村再生 「限界集落」問題を超えて』(岩波書店・2009)を用いて新しい農山村コミュニティの特徴、産業構築のポイントなどを学びました。


1.新しい農山村コミュニティの特徴―多面的に活動する地域組織の共通する傾向

従来の集落機能とは異なる農山村コミュニティが、特に2000年以降からNPO法人や任意団体という形で地域組織が多く生まれています。
その新しい農山村コミュニティの特徴とは、自治組織でありながら「役場」のように産業振興、福祉、防災、伝統文化保存に及ぶ総合性を発揮している点が従来の集落機能とは異なります。
以下の四つの活動が段階的に積み重なっています。
1.暮らしの「安全」を守る防災
2.暮らしの「楽しさ」を作り出す地域行事
3.暮らしの「安心」を支える地域福祉活動
4.暮らしの「豊かさ」を実現する経済活動
こういった活動の根底には、地域住民が「自らの問題だ」という当事者意識を持って、地域の仲間と共に手作りで地域の未来を切り拓くという積極的な対応が新しいコミュニティの基本性格といえるでしょう。

そして興味深いのは、これらの新しい農山村コミュニティというのが2008年の調査時点での事例の多くは静岡県以西の西日本に限定されており、西高東低の傾向がはっきり見てとれます。それには2つの理由があり、第一にこういった農山村コミュニティは過疎化・高齢化の反作用として生まれるものが多く、農山村の高齢化の地域的分布自体が西高東低を示しているから、になります。第二に、市町村合併の進捗が西日本では著しく、広域自治体の中で住民自治(小さな自治)の強化が主張された背景によるものです。あくまで草の根のコミュニティ運営は、お互い面識を持つ、いわば「面識集団」の範囲で、また「手触り感」ある規模が望ましいといえるのではないでしょうか。


2.新しい産業構築のポイント ― 4つの経済

新しい農山村コミュニティの特筆すべき点に自治組織であると同時に経済組織の役割を担っていることがあげられますが、農山村の所得水準が急落している中で、公共事業に依存しない産業育成が喫緊の課題となっております。これに対する全国における取り組み事例は、次の「四つの経済」の構築・確立としてまとめることができます。
①地域資源保全型経済―新たな産業のベース
 地域資源を有効利用する上でそれを保全する活動を通じた産業構築があります。例えば、熊本県阿蘇地方の草原
独特の景観を創り出していますが(景観資源)、本来はこの地方で約1000年の歴史があると言われる牛馬飼育のための草地(畜産資源)です。この地域資源の維持には毎年の野焼などの保全活動によって地域資源が保たれた好例と言えます。
②第六次産業型経済―新たな産業の分野
 食用農水産物の国内生産額10.6兆円(その他輸入品の農水産関連物が8.9兆円あるので合計19.5兆円)と飲食料の最終消費額73.5兆円のギャップに含まれる付加価値と雇用を農山村サイドで獲得する活動に産業構築の機会があります。その代表例でいえば農家レストランが該当し、ある種これ以上の付加価値を付けられない究極の第六次産業と言えます。
③交流産業型経済―新たな産業の展開
 都市農村交流を通じて、農山村の自然、文化、景観、さらには暮らしの小さな技(手法)や知恵を学ぶことができます。農山村側でも地域でありふれた「田舎料理」や日常の風景に対する都市住民の反応を持って、地域にある宝の存在を確認できます。例えば日本におけるグリーンツーリズムのメッカと言われる大分県旧安心院町(現宇佐市)の「農泊」(農家・農村での民泊)では、「行きつけの農家をつくろう」というキャッチフレーズをもとに、社会教育の場、「学びあい」という付加価値が確立されている。
④小さな経済―新たな産業の規模
 農山村では、経済的水準が十分ではない所得問題が全般的に発生しています。しかしながら望む追加所得の額は必ずしも大きな金額ではなく、月3~10万(年収36~120万の水準)の増収を望んでおり、これらの水準の産業を興すことは現在の農山村でも大きな困難ではなく、直売所における野菜の販売、農産加工による収入、集落営農のオペレーター労賃でも年30~60万円の所得水準に達します。

四つの経済を複合的に活用した事例として、高知県馬路村のゆず・間伐材によるむらづくりがあります。ゆずを中心とする農産加工はいまや30億円以上の販売額(第六次産業型経済)で、経済規模は販売額一戸平均100万円前後の積み上げによって成り立っています(小さな経済)。また、間伐材による木材加工に必要な森を守るための間伐材利用(地域資源保全型経済)というストーリー性を持ち人気を博しており、これらのゆず加工、木材加工の体験メニュー(交流産業型経済)も存在します。


3.所感

新しい農山村コミュニティはコミュニティ再生と地方自治体再編で学んだこと密接であり、主体的な取り組みが求められるのだろう。幸福の政治経済学でも明らかにされているように、政治的参加が経済的豊かさとは異なる幸福を住民にもたらし、それが地元への愛着心の育成、さらには地元農山村に残るインセンティブにつながっていく可能性があります。

産業構築のための四つの経済を学びながら、私たちが実地調査をした島根県海士町でもこれら四つの経済を網羅しており、地方産業を盛り上げるに必要なポイントに感じ取れました。
しかしながら農山村出身者だけで「小さな経済」を多数作り出すことができても、その動きを維持・安定化させるための新たな販路の開拓を行う存在が不可欠に思え、それはその農山村出身者だけでは困難なように感じます。その点を補完するのが、総務省が取り組んでいた地域マネージャー事業やNPO法人ETIC.が取り組んでいる地域イノベータープログラムにみられる「ヨソ者」の力なのだろうと考えています。
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