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地域経済を支える地域・中小企業金融

2月5日の勉強会では「地域経済を支える地域・中小企業金融」と題して、米国におけるコミュニティバンクの存在を共有し、地域に根差したリレーション・バンキングと金融行政の問題点を議論しました。


地域経済を支える地域・中小企業金融1.参考図書
齊藤正/自治体問題研究所 編者
『地域と自治体 第32集 地域経済を支える地域・中小企業金融 ―持続可能な社会に向けた地域金融システムづくり―』
(自治体研究社・2009)
※主に「第7章 米国のコミュニティとコミュニティ・バンク」をテーマに意見交換しました。


2.本書の主張
市場原理主義に基づく「アメリカン・スタンダード」に無邪気に追随した日本の「金融立国」構想を批判し、それを米国やEUで確固として根付いている「地域スタンダード」に基づいた地域・中小企業金融が必要である。

■「アメリカン・スタンダード」
 巨大な資本をもとに世界市場を席巻している資本の論理。金利や証券価格といった指標が資金及び資源の最適配分にとって唯一・最良の判断とみなす価値観による。ウォールストリート側(主要金融市場、大手金融機関、大都市部)。

■「地域スタンダード」
 日々の仕事に勤しみ家庭を営む米国人一般が暮らすコミュニティの論理。協働意識が強く、地域社会における実直な生産活動や商取引こそが正当な報いを与えられるべき、という価値観による。メインストリート側(小企業・個人金融の円滑化、コミュニティバンク、非都市部・地方都市・インナーシティ)。


3.本書の概要

■米国におけるコミュニティ・バンクの存在
・約8,000行のコミュニティ銀行(総資産30億ドル未満の銀行数、2008年6月末)、約8,000組合の協働組合のクレジット・ユニオンが存在し、これらを本書ではコミュニティ・バンクと総称している。
・米国は日本の経済規模が3倍だが、ローカルな金融組織数は十数倍。
・米国では人口3万人程度であれば一つ二つ本店銀行があることが望ましいという感覚。現に大都市以外ではそのようになっている場合が多い。

→ 私見:そのようなコミュニティ金融の大きな役割はあまりフォーカスされず、いわゆる資本の論理・市場主義が米国のイメージであった。後者は無論社会的なインパクトが大きいため注目されて当然と言えば当然なのだが、一方でコミュニティ・バンクの占める割合はなかなか知られていない事実ではないだろうか。

■米国におけるコミュニティの価値観
・人々が交流しあい、地域に根ざした協働を重視する。
・「地域の中で勝ち負けを目指して、勝ち組になろう、出し抜こう」という気風ではなくて、「みんなが生き残れるにはどうしたらいいか」という気風が残っている。
・苦しいときに取引を切るのではなく、「何か困ったときにはお互い様」という互酬性(reciprocity)が備わっている。

→ 私見:米国の個人主義というイメージが定着しており、このよなコミュニティの性質はあまり表に出てこない事象である。「助け合い、協働」の精神は私にとっては実現したい社会の様相であり、美徳意識もくすぐられる一方、近年の「自己責任」といった強い個人の仮定が進む日本では着実に失われつつある事象に思える。

■リレーションシップ・バンキングの本質
・「リレーションシップ・バンキング」とは、金融機関が、借り手である顧客との間で親密な関係を継続して維持することにより、外部では通常入手しにくい借り手の信用情報などを入手し、その情報を基に貸し出し等の金融サービスを提供するビジネスモデル。
・日本も2003年からリレバン政策を進めているが、金融庁の効率性、利益率を求める機運により、利益や業容に貢献しにくいリレバンの本質が抜けてくる。
・結果、中小企業融資にはスコアリングをやればよい、といったリレバンとは対極に位置するような「トランザクション・バンキング」の要素が入ってくる。

→ 私見:リレバンの実施は調査コストが嵩み利益率の低下を招く。リレバンの成果と同時に金融庁は利益率や健全性を求めることはアンビバレントな印象を受ける。ゆえにトラバンにみられる定量的な手法を金融機関が採用するのは合理的な行動であると納得している。

■CRA制度
・CRA(Community Reinvestment Act)、地域社会再投資法とは、特に大手・中規模銀行(総資産10億ドル以上)に対して、支店を置くコミュニティに属する地域組織への出資、無利子・低利の貸付や預金、あるいは経費を支援する寄付を半ば強制的にさせる法律。
・上記支援により当該銀行に得点が与えられ、CRA検査でマル・三角・ペケがつき、それが金融監督当局のHPで公開される。
・経済学的には「強制」ではく、「インセンティブ」を与えていると評されるゆえ、自由主義経済に反するという批判を回避している。

→ 私見:ウォールストリートのカネをメインストリートに落とすインセンティブ構築に成功した事例のように思う。米国の地域コミュニティ金融を円滑化させるメジャーな取り組みであり、メカニズムデザインの好事例と言える。

■日米の金融行政比較
金融・経済危機の苦境時に…
【米国】
・NPOやコミュニティ・バンク、キリスト教会がここぞとばかり来る社会
  → いちばんの土台の部分で、地域社会に協働・助け合いやそのための諸組織が必要だということを政策の基本に残していった国。
【日本】
・派遣村は急遽作られても全くの粗っぽいセーフティネットしか提供できない
  → 国、次いで大企業、果ては「自己責任」任せにして等閑視し続けた国。

→ 私見:国→自治体→コミュニティという発想は、地方自治体における補完性の原則を逆行しているように思える。


4.総括
リレバンの本質を欠いた政策が日本の金融行政の誤りであるという本書の主張をよく理解できたと同時に、その中で孤軍奮闘する信金・信組の取り組みに尊敬の念を抱いた。米国におけるコミュニティ・バンクがコミュニティにコミットする有様を学んでいると日本の信金・信組や先日特集したドーガン・アドバイザーズの取り組みを彷彿させる内容であった。
私自身、米国は個人主義・市場主義がまかり通っているとばかり思っていただけに、米国のコミュニティに対する価値観やそれに対する金融機関の在り方は、新しい視点をもたらせてくれるものであった。
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